ケガの具合はどうだ。
ひざ、もも、腕、顔面、いたるところに擦り傷や出血もある。
ただ、骨は折れてはいないようだ。
腕も上がる。足も上がる。首も回る。
体のあちこちが傷むが、動けないこともない。
バイクはどうだろう。
ホイールは回る。ブレーキも効く。
変速も問題ない。ハンドルも動く。
「リタイヤ…しなきゃいけないのか」
ここで止めたら、来年の佐渡Aに出られない。
佐渡への出場権を得るために、
東京から丸々12時間もかけ一人で能登半島の先端までやってきた。
体もバイクも動く。
まだ諦めるには早い。
「続けます」
そうスタッフに告げ、駆けつけてくれた救護車で簡単に応急手当を済ます。
そして、バイクにまたがりペダルを踏んだ。
体は動く。バイクも動く。生きている。
もしガードレールの向こうが崖だったら、助からなかっただろう。
生きている喜び、感謝、落車の恐怖、峠を登れなかった自分への情けなさ、怒り、危険を犯してしまったことに対する家族への申し訳ない気持ち…
それでも自分は今、生きて、ペダルを漕いでいる。
グチャグチャの感情が押し寄せ、涙が出てきた。
そして何とかバイクを終え、ランに入る。
さすがに快調に走ることはできないが、それなりに走れる。
暑さ対策で水をかけてくれる人もいたが、キズに沁みるので断る。
流血しながら走る自分を見てビックリるする沿道の子ども。
「血が出てますよ!大丈夫ですか?」と呼び止めるスタッフ。
「わかってます。大丈夫だから走ってるんです!」と心で叫び、走り続ける。
そして20kmを走り終え、波乱のレースを終えた。
フィニッシュ写真を見ると、さすがに爽やか笑顔とはいかず、
苦渋に満ちた顔でのゴールだった。
ちなみに、珠洲の海はとてもキレイだった。
翌朝、海で遊んでいる選手を見た。
ケガをしていなかったら、ぜひともひと泳ぎして帰りたかった!
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